惨響

一.無明の橋~百鬼夜行

逢魔の時

眼ひとつ持つ鬼

二つ角 三つ 四つ連れ往く

百鬼夜行 百鬼夜行

百八 厄災

 

滅する 絶対なる死

没する 世

妖異渦巻く 大群の妖怪

闇の向こう覗き見てはいけない

百鬼夜行 百鬼夜行

百八 厄災

二.黒と赤だけの世界

惨響残る血溜まりの中

何かだったものを掴んでいる

それは手か足かそれとも首か

黒と赤だけの世界

滴る

暴力の後

引きちぎり 剥いでいく 人皮

生きたまま すり潰す 睾丸

えぐり取り 絞り出す 眼球

少しずつ 少しずつ

ゴポリ ゴポリと

鳴く

何か

黒と赤だけの世界を

惨響の嵐と静けさで

染める

暴力の海

暴力の朝

暴力の夜

暴力の詞

黒と赤の世界

暴力の世界

黒と赤だけの世界を

惨響の嵐と静けさで

染める

暴力の海

暴力の朝

暴力の夜

暴力の詞

三.首、よこせ

第一
さぶらひの誉は
大将首をして逃すな
怨首刎ねてこそよ

第二
首、生かして帰るな
殺せず生き恥晒すな
主君に報いたくば取れ

首、よこせ
首、よこせ

産まれしは 武士
その本懐は
主君に仇なす
首を取る

第一
さぶらひの誉は
大将首をして逃すな
怨首刎ねてこそよ

第二
首、生かして帰るな
殺せず生き恥晒すな
主君に報いたくば取れ

首、よこせ
首、よこせ

  

四.二人椀久

「逢いたかった」夢とうつうつ
狭間に堕ちゆ
朧月夜にぼうと
哀れみ 抱いて
椀屋久兵衛

あぁ醜い
恋に破れた
無様極まる化生面
懸想虚しく夢想の胡蝶
追つ追われつの
一人芝居



追えど
松山は
決していない

五.黒塚

迷い家 鬼の巣にて
人を騙りて一夜宿をとらせんと
暖かな飯と布団をあつらえ
眠りしころに邪鬼鉈を研ぐという

「その血その肉わしに寄越せ」

低く笑う鬼の狂気の横顔
じゃりじゃりと錆を落とす音が響き
目の当たり正体みたりや
眼を覚ました人は、あなや驚き駆ける

立ち込める
異臭
鬼が来る
追い立てる
逃さぬ
怒声
御仏を
握りしめ
ただ祈る
唱えよ
祈りを
唱えよ

羯諦羯諦 波羅羯諦  波羅僧羯諦  菩提娑婆訶

六.禍津星

禍津星輝く時
天地表裏覆らん
禍津星輝ける時
日神は怒り参らん

嵐吹き
獄炎山を焼く
水の壁
猛る龍の如し
生きとし生けるもの全て
嚥み下す呪われた神

天外 条理を超えしものが
災厄もたらさん
禍津星

病蔓延り
土は痩せ
草の一つも残りはしない
ふりそそぐ雷の槍
森羅万象焼き尽くさん

禍津日神は参らん

嵐吹き
獄炎山を焼く
水の壁
猛る龍の如し
生きとし生けるもの全て
嚥み下す呪われた神

天外 条理を超えしものが
災厄もたらさん
禍津星

七.忍び月夜は朧にて

忍び月夜は朧にて
その奥の闇もゆらり
幽玄也

合わせ鏡の奥の底
影と陰との境目に
あぁ 浮き沈みたる人の念
常闇に燃えては絶ゆる期なし

深遠に沈み観入れば
冷厳なる寂滅の如し
情念に取り憑かれなば
際限なき獄炎の如し

深遠に沈み観入れば
冷厳なる寂滅の如し
情念に取り憑かれなば
際限なき獄炎の如し

合わせ鏡の奥の底
影と陰との境目に
あぁ 浮き沈みたる人の念
常闇に燃えては絶ゆる期なし

忍び月夜は朧にて
忍び月夜は朧にて

 

八.嬲殺

犯せし罪 酌量余地なし
人倫にて裁く術はなし
さらば堕ちて舐めるそれは黒き鉄の味
したたりて蛆の生える肉のごとき也
四肢 切り裂きて
両目 抉る
耳鼻 削ぎ落とし
厠落つは糞を食む豚

嬲り殺し
人豚の体

毎日 身体 鑢がけ
毎日 燻り 塩で焼く
歯牙削る 鋸刃糸
人としての死はやらぬ

糞袋の腹を打て
人を豚へと変えてみよ
腸袋打て
糞袋打て
人を豚へと変えてみよ

裂け 腫れた腹は豚の様
悶う姿 叫び声も豚のごとし
まだだまだまだ 楽に死ぬな 人でなしめ
やれ打てや打てや人豚人豚

 

九.日輪之国

日の本の後輪をたたえし 浮かぶ島に谺す咆哮
闇を払うその加護を受け
乱脈に飲まれし混沌の世に
真の和を持たらさん

天下泰平 絶えず 願わん

焼かれ 裂かれ  貶められても 何度でも蘇らん
また日が昇るその時 日輪は輝きを増すのだ

天下泰平 絶えず 願わん

焼かれ 裂かれ  貶められても 何度でも蘇らん
また日が昇るその時 日輪は輝きを増すのだ

 

十.大江山刹鬼譚

返り血かかり滑る肌
鬼火燃ゆる十五の光眼
天に背く五本角
鬼頭大江山にあり

悶える姫君の顔面油で揚げ
朽ち錆びた鋸刃で肉壺かき混ぜ
生きた胎を裂き
刈り取った手足で潰した子種の血の酒飲みほす

鏖し
刹鬼譚
鏖し
酒呑童子

泣き叫ぶ童臼に押し込んで
杵つき返す魑魅魍魎の声
えいっ さっ えいっ さっ
えいっ さっ えいっ さっ

返り血かかり滑る肌
鬼火燃ゆる十五の光眼
天に背く五本角
人を喰らう畜生頭
大江山刹鬼譚
大江山酒呑童子

 

十一.臓漁り

羅生の門に彷徨う者ありて
いざ人の道を外れては
腐肉にありつかんとす


惑いは世路
思い馳せろ
悔悟は零

臓漁り
盗人見たり
物の怪なり

くちゃりくちゃりと死骸を喰らう
物悲しきかな餓鬼の姿
諸行無常の成れの果て
あぁ 哀れ也 あぁ 哀れ也


惑いは世路
思い馳せろ
悔悟は零

臓漁り
盗人見たり
物の怪なり

羅生の門に彷徨う者ありて
いざ人の道を外れては
腐肉にありつかんとす


惑いは世路
思い馳せろ
悔悟は零

臓漁り
盗人見たり
物の怪なり

 

十二.保名

狂え狂え狂々狂え 狂え 狂え狂え狂え
狂え 狂々々狂え 狂え 狂々々狂え
嘆きよ…

逝くな…逝くな…あぁ…

 

十三.血塗レノ便箋

花の命は短くて
爪を立てればボロボロと
剥がれて落ちて血が流れ
恋に焦がれて朱に染まる

恨めしや

愛し恋しやあの人に
この血で文を書きましょう
可愛さ余り恨めしや
きっとここには戻らない
あの人のくれた花飾り
枯れて萎れて朽ち果てた
好きと言ってた桜の木
抱き縋って啜り泣く

血塗レノ便箋
あの人に届けたもう

空に輝く月くれた
愛し恋しやあの人に
一目、も一度会いたくて
この血で文を書きましょう
今では雲が立ち込めて
貰った月もどこへやも
待てど暮らせど来ないから
この血で文を書きましょう

血塗レノ便箋
あの人に届けたもう
恨めしや
恨めしや

十四.恋情

激情 衝動 情動 感情 恋情 慕情 暴走 迷走

愛する
君を

あぁ 恋情
片道分の儚い慕情

心に秘める

離れて行く君に好きだと何度も叫ぶ僕の破壊願望
だけど上手に出来ない僕は君を惹き止めることはできなかった

あぁ 恋情
片道分の破壊衝動
胸に募る

あぁ 恋情
片道分の破滅行動
君を殺したい

あぁ 恋情

君を殺したい

あぁ 恋情

君を殺したい

十五.夢が殺しにやって来る

あの地平線の向こう側 夜の闇の何処かに紛れて
きっと何か特別なものが僕を待っていてくれると
そうよく思い描いた子供の頃
そんな空白の時代が過ぎて
虹の麓には誰も行けず、そこに何もないと知った今
少年少女に胸を張って夢を語ることができる人が
一体どれだけいるのでしょうか
たった一握りの許された人にしか夢を語ることはできないのです
そして多くを望まず、ただ真実の愛に救いを求めて大海原にいざ漕ぎ出す
しかし、数多くの出会いと冒険が、何処にもなにもないことを教えてくれるのです
いないのです どこにもいないんです
あなたを心から愛する者などいないんです
あなたはきっと何も信じられない
その偽物の愛を真実だと 贋作を本物だと
自分を欺き通すことなど出来ないんです
いつかきっと孤独に気付くんです
楽しい気持ちだけを分かち合い
辛い気持ちには唾を吐く
それが友情というもので 愛などその亜種でしかないと
何処にもいないのです
あなたを心から愛する人などいないんです
風は歌を運びなどしないし
その声はどこにも届かない
その最果てに
誰もいないどこかに
ただ虚しく消えていくだけなのです
夢を諦めるな なんて 言えないのです
愛を諦めろと胸を張って言えてしまう
そんな大人に皆なるのです
命は使い捨てで、磨り減り、取り返しのつかない自分に気づいた時
皆真の孤独を知るんです
君は孤独だ、君一人が生きている
ただそこに価値なんてない
何者でもないあなたに 価値なんてないんです
夢を掴んだ人だけが何者かになり
それ以外の誰かは、誰かですらない
どうかどうか夢を持たないで
あなたを愛する人は この世のどこにもいないのだから
あなたは孤独で価値がないのだから
どうか夢に殺されないで
とうか夢に殺されないでください

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